論文AdventCalendar7日目: milleCrepe: Extending Capabilities of Fluid-driven Interfaces with Multilayer Structures and Diverse Actuation Media
AdventCalendar7日目です。刻一刻と年末が迫ってきており絶望しています。
話が変わり、私事ではありますが本日はパソコン甲子園の報告と記念撮影をしました。
グランプリ副賞の米は部活と卒研室でおにぎりパーティをして美味しく消化するらしいです。
関係ない話は以上として、本日もやっていき。
今回読んだ論文
Qiuyu Lu, Jifei Ou, Lining Yao, Hiroshi Ishiiによる、
"milleCrepe: Extending Capabilities of Fluid-driven Interfaces
with Multilayer Structures and Diverse Actuation Media"
を読みました。
アブスト
- 多層構造かつ多様な作動媒体を利用した流体駆動インターフェースの機能を拡張するmilleCrepeを紹介する
- 異なるレイヤーを選択的に作動させることで複数の形状変化が可能になる
- 異なるチャンバー層の多様な作動媒体が相互作用し、圧力差によって可能になる物理的なロジック構造を実現できる
- 多層チャンバーによる2D平面の3Dソリッド変換ができる
- 色の液体混合物に対応する動的な外観を作成できる
- 相変化による調整可能な剛性を作成できる
- 製品設計とインタラクションデザイン設計の両方におけるテクノロジーの可能性提示のためのアプリケーションを作成する
結論
- Fluid Design Interfaceを拡張するために、多層チャンバー設計戦略であるMille Crepeについて紹介した
- 異なるチャンバー層の様々な構造と媒体が相互作用し、以前の研究で提示された多くの種類のI/Oのモダリティ変換を提供する方法を示している
- 駆動薄膜材料のライブラリが拡張される
- しかし、まだ制限と改善の余地がある
- 多層シームレスパターン設計を用意にするための設計ツール開発・反復プロセスを合理化するシュミレーション機能を提供できる[14, 42]
- 湿度・磁場・電場・重量を検出、出力するための機構でさらに機能性が向上する可能性がある
実装・検証
- milleCrepe複合材は、4種のチャンバー構造・4種の媒体で構成され、多様な設計オプションを提供する(Figure 2)
- 体積の変更、形状変形、動的外観、調整可能な剛性といった出力形式を備えたインターフェースの実現が可能
- 組み込みロジック機能は電気を使わなくとも動作し、熱信号や外力の入力によって処理を行う
- milleCrepeを製造するには、はんだごてを利用して上部2層のみを効果的に密封するために特にプレス距離などの密封パラメータを制御することが重要
- 体積変化機能では、加圧膨張した複数のチェンバーを統合し、容積を大幅にカスタマイズして調整することができる
- 厚さ20μmのフィルム8層で密閉され、円形の通気孔で接続された4つの約60cm×60cmのチャンバーを備えたプリミティブが、膨張時に約0.17mmの薄い平面から約1000mmの高さの固体に変形する
- Prinflatables [33]は、同様の概念を提唱しているが論文で詳細を説明していない
- 直線形状以外にも方向制御による曲線形状の変形を生み出して鋭い曲げを表現し、(Figure 3.b)、各層のチャンバーを2つの異なるサイズに分割することで大きな半径の曲げが実現できる(Figure 3.c)
- 様々なつなぎ目を組み合わせて空間曲線を作成できる(Figure 3.d)
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- シームパターンのデザインは、単純な直方体形状を超える変形を可能にするためにカスタマイズ可能である(Figure 4)
- 4つのシームパターンは積み重ねて密封できるが層を増やすと密封品質が低下し、可逆性が低下する可能性がある
- シームパターンのデザインは、単純な直方体形状を超える変形を可能にするためにカスタマイズ可能である(Figure 4)
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- 形状変形では、異なる折り畳みチャンバー層を通気孔で接続せずに積み重ねると、独立した作動により複数の形状を切り替えることができる
- 複数の層を同時に膨張させると、形状の組み合わせを作成できる(Figure 5.b)
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- 近い層の変形によって入口の空気チャネルがブロックされる可能性があるため、最初に空気の流入口から最も遠いチャンバー層を加圧することが重要である
- 複合材はフィルム層が少ない側に曲がる傾向があり、折りたたみ方向を制御できる
- チャンバー層の加圧は上部または下部のフィルムによって妨げられ変形に影響する可能性がある
- 体積変更プリミティブの場合、1つのフィルム層を前のチャンバーに直接密封することで次のチャンバー層を作成できる
- 隣接する層が共通フィルムを共有するためフィルムの総量が減少する
- 1.1barで作動する標準曲げユニットの性能がフィルムの層の数の増加によりどのように影響を受けるかは、継ぎ目の複雑さに応じて最大3~4層のチャンバー(5層のフィルム)を一緒に密封することで最適な複数の形状変換性能を維持できる(Figure 6)
- 隣接する層が共通フィルムを共有するためフィルムの総量が減少する
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- 動的外観は、3層の異なるチェンバー層が色のついた液体でパターンが形成されている(Figure 7)
- 最高・中間・最低レイヤーは連結弁によって中間レイヤーにつながっており、それによって三色の液体が流れ込んで混ざる
- 一定の入口電流が層流を生成してバーパターンを作成し、不均一な入口電流は乱流を生成して絶えず変化する色を生成する
- チャネルの閉塞を防ぐため2つのチャンバー層は中間フィルムを共有していない
- Venous Material[21]と比較すると、よりアクセスしやすい方法で製造できる
- 柔らかい薄いフィルムで作られており、高度なコンプライアンスを実現できる
- 調整可能な剛性では、位相変換に依存し、非電気的な形状と剛性の変化を可能にできる可能性がある
- 下部チャンバー層に低温ワックスを充填した曲げプリミティブは、40℃以上の温度にさらされると柔らかくなり、50℃で完全に溶ける。そのため上部のチャンバー層にお湯を入れるとワックスが柔らかくなり、サンプルが折り曲げられる(Figure 8.c)
- 折りたたまれた形状を維持するために水が冷えてワックスが固まるまで出口を閉じ、ワックスが固まったあとに水が除去されサンプルが折りたたまれた状態を維持する(Figure 8.d)
- 熱湯を外部熱源によって活性化される前に注入された低沸点液体に置き換えることで自己完結型の形状・剛性変化複合体を作ることができる
- 熱にさらされると低温液体が沸騰し、チャンバー層が膨張し、他の層のワックスが溶けると複合材が徐々に変形し、熱源が取り除かれるとワックスが固形化しながら熱を放出しつづけ、ワックスが硬化して形状を固定するまで低沸点液体チャンバー層の膨張を維持する
- 下部チャンバー層に低温ワックスを充填した曲げプリミティブは、40℃以上の温度にさらされると柔らかくなり、50℃で完全に溶ける。そのため上部のチャンバー層にお湯を入れるとワックスが柔らかくなり、サンプルが折り曲げられる(Figure 8.c)
- 組み込みロジック機能では、NOTゲートやNAND/NORなどの論理回路を電気なしに動作できるようにし、マクロなインターフェースの設計に適した仕組みを作っている
- 従来のNOTゲートは2つの剛性基盤の間の薄いPDMSダイヤフラム膜を変形させるものである(figure 9.a)
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- 薄くて柔軟なフィルムで作ろうとすると、冷間プレス、成形・鋳造、レーザーマイクロ加工などの高度な技術を使用してマイクロスケールのチャネルを作成する必要がある[7]
- マイクロ流体チップとは異なり、垂直に交差する2つのチャネルを3層のフィルムで密閉することでNOTゲートを作成する。
- 全体の寸法は 80 mm × 50 mm、BOPP フィルムの厚さは 20 𝜇m、継ぎ目幅は 約 1 mm、作動媒体は空気、チャネルは中央に配置され、サンプルの 4 つの角は硬い平らな基板に固定されている。
- NOTゲートを作成することでNAND/NORゲートを簡単に実装できる(Figure10.c, d)
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- ORゲートの出力ポートはメインチャネルから分岐し、メインチャネルの半分の幅である
- 両方の入力が「0」だとメインチャネルに沿ってベントに媒体が流れる
- いずれかの入力が「1」になるとメインチャネルがブロックされ、圧力が上昇し、曲げユニットを動作することができる
- Figure10の全ての例は視覚的にわかりやすいように色付きの水で示している
- 温度に反応するNOTゲートは低沸点液体を使用し、加熱されるとチャンバーの膨張によりメインチャネルがブロックされる
- 外力に反応するNOTゲートは、少量の空気が注入されており、外力を受けるとチャンバーの内部圧力の上昇によりメインチャネルがブロックされる
- ORゲートの出力ポートはメインチャネルから分岐し、メインチャネルの半分の幅である
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関連研究
- ソフトロボティクスから派生したHCIの研究者は流体作動技術を利用して形状を帰るインターフェースを開発してきた
- PneUI [40], Printflatables [33], PuPOP, [35], AeroMorph [25], AccordionFab [39], ElliotW.Hawkes et al. [9], Pneuseries [3], and Sustainflatable [19], といったように、様々なメカニズムとマテリアルを探索してきた
- その中でも、aeroMorph [25]が2層の形状変形メカニズムについて紹介していた
- AccordionFab [39]はレーザーカットによる複数プラスチックの多層構造を実装していたが、追加の熱抵抗紙が必要であり、3Dオブジェクトの作成に限界がある
- 低沸点液体、紫外線感受性樹脂(レジン)、水、ガス発声科学物質などの代替作動媒体も研究されてきた[8, 13, 16, 23, 37, 38]
- マイクロ流体力学では研究者がバルブを使用したオンボードロジック構造を開発している[22, 31]
- Rajappan ら [29] は、熱シール織物による流体スイッチを実証し、ロジック構造を構築した。
- しかし、いくつかの研究ではスイッチが高圧下で信号層エアバッグが大きく変形することに依存しており、接続したバルブに障害を引き起こす
- 流体計算はHCIで注目を集めている[5, 34]がビーム反射メカニズムを使用しているため連鎖可能な構造が制限され、広く採用されているわけではない
- The Fluidic Computation Kitは複雑な流体計算ユニットを構築するためのモジュール式のブロックを提供するがブロックの製造は労働集約的になる可能性がある[18]
- 最近の研究努力にも関わらず、FDIには大きな可能性がある
- この研究では密封された薄い熱可塑性フィルムの層を利用し、チャンバーの異なる層とその作動媒体がどのように連携して複合材料の特性を高め、その機能を拡張できるかに焦点を当てている
参考文献(興味あるもののみ記載)
[11] Joshua D Hubbard, Ruben Acevedo, Kristen M Edwards, Abdullah T Alsharhan, Ziteng Wen, Jennifer Landry, Kejin Wang, Saul Schaffer, and Ryan D Sochol. 2021. Fully 3D-printed soft robots with integrated fluidic circuitry. Science Advances 7, 29 (2021), eabe5257.
[21] Hila Mor, Tianyu Yu, Ken Nakagaki, Benjamin Harvey Miller, Yichen Jia, and Hiroshi Ishii. 2020. Venous Materials: Towards Interactive Fluidic Mechanisms. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (Honolulu, HI, USA) (CHI ’20). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 1–14.
[40] Lining Yao, Ryuma Niiyama, Jifei Ou, Sean Follmer, Clark Della Silva, and Hiroshi Ishii. 2013. PneUI: Pneumatically Actuated Soft Composite Materials for Shape Changing Interfaces. In Proceedings of the 26th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (St. Andrews, Scotland, United Kingdom) (UIST ’13). ACM, New York, NY, USA, 13–22. https://doi.org/10.1145/2501988.2502037
[8] Juri Fujii, Satoshi Nakamaru, and Yasuaki Kakehi. 2021. Layerpump: Rapid prototyping of functional 3d objects with built-in electrohydrodynamics pumps based on layered plates. In Proceedings of the Fifteenth International Conference on Tangible, Embedded, and Embodied Interaction (Salzburg, Austria) (TEI ’21)
[13] Shuguang Li, Daniel M Vogt, Daniela Rus, and Robert J Wood. 2017. Fluiddriven origami-inspired artificial muscles. Proceedings of the National Academy of Sciences 114, 50 (2017), 13132–13137. https://doi.org/10.1073/pnas.1713450114 arXiv:https://www.pnas.org/doi/pdf/10.1073/pnas.1713450114
[16] Qiuyu Lu, Jifei Ou, João Wilbert, André Haben, Haipeng Mi, and Hiroshi Ishii. 2019. milliMorph – Fluid-Driven Thin Film Shape-Change Materials for Interaction Design. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (New Orleans, LA, USA) (UIST ’19). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 663–672. https: //doi.org/10.1145/3332165.3347956
[23] Kenichi Nakahara, Koya Narumi, Ryuma Niiyama, and Yoshihiro Kawahara. 2017. Electric phase-change actuator with inkjet printed flexible circuit for printable and integrated robot prototyping. In 2017 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA). 1856–1863. https://doi.org/10.1109/ICRA.2017.7989217
[37] Penelope Webb, Valentina Sumini, Amos Golan, and Hiroshi Ishii. 2019. AutoInflatables: Chemical Inflation for Pop-Up Fabrication. In Extended Abstracts of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (Glasgow, Scotland Uk) (CHI EA ’19). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 1–6. https://doi.org/10.1145/3290607.3312860
[38] Michael Wehner, Ryan L Truby, Daniel J Fitzgerald, Bobak Mosadegh, George M Whitesides, Jennifer A Lewis, and Robert J Wood. 2016. An integrated design and fabrication strategy for entirely soft, autonomous robots. Nature 536, 7617 (2016), 451.
[29] Anoop Rajappan, Barclay Jumet, Rachel A Shveda, Colter J Decker, Zhen Liu, Te Faye Yap, Vanessa Sanchez, and Daniel J Preston. 2022. Logic-enabled textiles. Proceedings of the National Academy of Sciences 119, 35 (2022), e2202118119.
[22] Bobak Mosadegh, Tommaso Bersano-Begey, Joong Yull Park, Mark A Burns, and Shuichi Takayama. 2011. Next-generation integrated microfluidic circuits. Lab on a Chip 11, 17 (2011), 2813–2818.
[31] Minsoung Rhee and Mark A Burns. 2009. Microfluidic pneumatic logic circuits and digital pneumatic microprocessors for integrated microfluidic systems. Lab on a chip 9, 21 (2009), 3131–3143.
[18] Qiuyu Lu, Haiqing Xu, Yijie Guo, Joey Yu Wang, and Lining Yao. 2023. Fluidic Computation Kit: Towards Electronic-free Shape-changing Interfaces. In Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (Hamburg, Germany) (CHI ’23). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 211, 21 pages. https://doi.org/10.1145/3544548.3580783
感想
Radical Atomsが提唱されたこともあるかもしれませんが、HCIのMediumとマテリアルが昔の論文に記載されているものより増加している印象がつきました。
そのため、情報処理だけではなく、生物学・流体力学も組み合わさり、他の専門分野と共に行う研究がどんどん広がっていっているように感じています。
ナノロボティクスや生物をマテリアルとするのもより多くのアフォーダンスを提示できるようになる気がして結構おもしろいなと思っています。
——以上——