論文AdventCalendar19日目: Transformative Appetite: Shape-Changing Food Transforms from 2D to 3D by Water Interaction through Cooking
AdventCalendar19日目です。
本日は進捗を出す日なので書いていなかったアドカレも順次更新します。
果たして明日で完成しきれるのか...
それでは本日もやっていき。
今回読んだ論文
Wen Wang, Lining Yao, Teng Zhang, Chin-Yi Cheng, Daniel Levine, Hiroshi Ishiiによる、”Transformative Appetite: Shape-Changing Food Transforms from 2D to 3D by Water Interaction through Cooking”を読みました。以下のリンクより閲覧できます。
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3025453.3026019
アブスト
- 一般的な食品材料(タンパク質、セルロース、デンプン)で作られた食用2Dフィルムが調理中に3D食品に変形できるという、変形可能な食欲のコンセプトを開発した
- 変形プロセスは水分の吸着によって引き起こされ、輸送コストと保管スペースを大幅に削減する「フラットパッケージ」コンセプトと非常によく適合している
- 材料ベースの設計を実行し、ハイブリッド製造戦略を確立し、パフォーマンスシミュレーションを実施した
- 形状、質感、食品材料との相互作用を表現するために、3つのアプリケーション手法が提供されている
- 2Dから3Dへの折りたたみ
- 水分誘導ラッピング
- 温度誘導自己断片化
結論
- 変形可能な食欲という、調理中に異方性膨張によって 2D の食用フィルムを 3D 形状に変形する新しいコンセプトを提案した
- 形状拡張モデルがユーザーインターフェースに組み込まれ、デザイン形状を作成し、変形をシュミレーションして変形可能な料理を製造できるようになった
実装・検証
- 調理プロセスは吸水と脱水のカテゴリに分けられる
- 本論文では吸水プロセスに焦点を当てる
- 水分の吸着中の食品材料の変化を定量化する
- ほとんどの食品ゲルは、分子構造または分子間構造内の親水性相互作用によって水を吸収すると、水分を吸収して体積が変化することがわかった
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- 材料の水分補給能力を定量化する方法の一つとしてEquation 1で定義される循環指数(ls)を使用する
- Wsは膨張した食品材料の重量
- Wdは感想した食品材料の重量
- 材料の水分補給能力を定量化する方法の一つとしてEquation 1で定義される循環指数(ls)を使用する
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- いくつかの主要な食用成分の膨潤指数を測定した(Figure 2)
- タンパク質(ゼラチン)、炭水化物(デンプン)、可溶性繊維(寒天)はいずれも10分以内に自重の約5倍を吸収できる(フィルム状)ことがわかった
- 不溶性繊維(エチルセルロースフィルム)は水をまったく吸収できないことがわかった
- 本論文ではゼラチンに焦点を当て、調理中の水和過程におけるゼラチン-スクロース複合フィルムの形状変化挙動について研究した
- なぜゼラチンを使ったかの4つの理由
- ゼラチンはゲル化プロセス前の溶液によく溶けるため、乾燥前の食品ゲルの均一性が確保される
- さまざまな分子量(またはブルーム数)のゼラチン材料が市販されており、化学的および物理的特性を簡単かつ正確に制御できる
- ゼラチンにはさまざまな供給源(豚皮、牛骨など)があり、食事をする人の特定のニーズに合わせることができる
- 他の食用材料(デンプンなど)と比較して、ゼラチンと空気の表面の平坦性が高く、支持ホルダー(ペトリ皿など)への付着性が低いため、平らなフィルムを準備するのがはるかに簡単
- 複合構造を形成するために、水吸収能力が低くアルコール溶解度が高いエチルセルロースを水バリアとして選択した
- なぜゼラチンを使ったかの4つの理由
- 本研究では食用材料の膨張と融解を変化させるためのパラメータとして温度を使用することを目指している
- いくつかの主要な食用成分の膨潤指数を測定した(Figure 2)
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- 高温では、食用フィルムは冷水中よりも速い速度で水を吸収できる(Figure 3)
- フィックの法則(Equation 2)より説明できる
- 拡散フラックス(J)は、拡散係数(D)と特定の場所(𝜕𝜑𝜕𝑥)の濃度の両方に依存し、拡散係数(D)は温度(T)と比例定数(D0)(材料固有)の関数。EAとkは定数。
- 高温では、食用フィルムは冷水中よりも速い速度で水を吸収できる(Figure 3)
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- ゼラチンの融点は非常に低く、高分子ゼラチンは約 40°C で溶け始め、低分子量ゼラチンは約 20°C で溶け始める
- 水和温度を調整することで、ゼラチンの物理的状態を固体から液体に切り替えることができる
- 低分子量ゼラチンを使用して温度に敏感なヒンジを作成し、融解によるプログラム可能な破損を実現できる
- ゼラチンの融点は非常に低く、高分子ゼラチンは約 40°C で溶け始め、低分子量ゼラチンは約 20°C で溶け始める
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- 上部からのみ水を蒸発させると、望ましい密度の不均一性を実現できることが分かった(Figure 4)
- 固体と空気の境界面には、界面に向かって固体が表面凝集するため、ゼラチンの濃度が高くなる
- 乾燥した上層を形成すると、フィルムの下部での水分の蒸発が制限される
- 密度の高い上層と、ゆるく多孔質な下層を持つゼラチン フィルムが形成される
- 制御可能な曲げ挙動を実現するために、ゼラチンフィルムの上に、形状制約と水分バリアの両方としてエチルセルロースストリップを導入する
- 半剛性ストリップ構造は、結合方向を制御し、上面の水吸着速度(主に水吸着面積の減少による)を調整することで動的な形状変化を生み出すのに役立つ
- 最初は下層の方が上層よりも高い吸水率を示し指定された時間が経過すると、折り畳み方向が逆転し、フィルム全体が下向きに曲がる
- 上層の水分吸収時間は水分吸着速度に比例する
- 上部からのみ水を蒸発させると、望ましい密度の不均一性を実現できることが分かった(Figure 4)
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- セルロースストリップの役割
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- 𝜇 はせん断弾性率、𝜆𝑖 、𝑖 = 1、2、3 は主伸張比
- 下部ゲル化層のせん断弾性率は単位値(𝜇1 = 1)として取られ、上部ゲル化層の弾性率は上部フィルムの密度が下部層よりも高いため、𝜇2 = 5 に設定される(Figure 4, SEM)
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- 直線を形状制約として使用して 1 次元の折り畳みを実現するだけでなく、2D 制約を使用するか、1D 制約を 2D サーフェス内に分散させることで、2 次元の折り畳みも開発した(Figure 8)
- 不均一な密度分布を持つ食用フィルム
- ウェットラボで容器としてプラスチック製の大型ペトリ皿(直径 15 cm)を使用して作成された
- 一方向の水分蒸発と制御可能な密度分布が保証される
- フィルムの作成手順
- 固形食用材料(ゼラチンまたはデンプン)を室温で特定の濃度(3~12% w/v)に溶解し、完全に水和させる(約 15 分)
- 溶液をさらに約 60°C のホットプレートに移し、水溶液中の固形物が完全に溶けるようにする
- フィルムに風味を加えるために、フルーツポンチ、野菜ジュース、魚介類エキスを混合物に加えたり、水の代わりに使用したりすることもできる
- 溶液をピペットでペトリ皿に移しゲルを形成、室温で約5分間硬化し、ファンのある風の当たる場所に移して、一方向に水分を蒸発させた(12~18時間)
- ウェットラボで容器としてプラスチック製の大型ペトリ皿(直径 15 cm)を使用して作成された
- エチルセルロース溶液
- 印刷されたセルロース繊維の剛性により、水和プロセス中のゼラチンフィルムの曲げ方向を制御する
- 最初に上向きに曲がり(下層の表面露出が高くなる)、次に下向きに曲がる(全体的な膨張容量が高くなる)
- 印刷されたセルロース繊維の剛性により、水和プロセス中のゼラチンフィルムの曲げ方向を制御する
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- 食べ物のインタラクションテクニック
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- ゼラチンシートの形状(円盤、楕円形、S字型など)と形状制約特性(セルロースの密度と厚さ、ラインギャップ、総被覆率など)を調整することで、さまざまな形状の食用フィルムを製造した
- 従来の成形パスタの形状と一致させることができた(Figure 13a-h)
- 新しい料理開発の可能性を秘めた新しい特殊な形状も作成した(Figure 13i-k)
関連研究
- Material Based Shape-Changing Interfaces
- 材料の構成と構造の設計、または事前にプログラムされたインタラクションを備えた‘computational’ Materialを通じた組み込みプログラミングの可能性を構想している[1-4]
- Rasmussen ら [5] は、機能目的 (動的アフォーダンス、コミュニケーション、力のフィードバック) と快楽目的 (感情体験と美学) を含む、形状変化インターフェースによって可能になる一連の新しいインタラクション モダリティを提案した
- Coelho らはさらに、形状変化インターフェースを設計するための材料ベースのアプローチを指摘した[6]
- さまざまな刺激の種類に反応する変形材料について説明している
- このようなアプローチを食品の応用に導入する
- さまざまな刺激の種類に反応する変形材料について説明している
- Water-Triggered Shape Transformation
- Shape-Changing Food and Digitally Fabricated Food
- 食品の形状は、調理と食事の両方の体験にとって重要な要素
- インタラクティブな食品のデザインは重要な研究トピック
- デジタル ガストロノミー [17]は、3D プリンターや CNC マシンなどのさまざまなデジタル製造機械を使用して、特性をカスタマイズしながら食品を準備する方法のビジョンとして提案された
- 本研究ではpH ではなく水和プロセスによって引き起こされる変形についてさらに深く調査することを提案し、より多くの刺激タイプが形を変える食品を引き起こすことを期待している
- 輸送と梱包のコストを節約するために、実用的な使用シナリオ (平らにパックされた食品) の調査に焦点を当てている
議論
- Flat-packed Food Challenges and Opportunities
- 都市部の食品の多くは遠隔地で生産され、顧客に出荷されるため、環境への温室効果ガスの排出により大気汚染が生じている [19]
- フラットパック食品は、食品輸送中に輸送される空気の量を減らすことで、汚染を部分的に軽減する可能性がある
- Future Fabrication Techniques
- 形状が変化する食用フィルムの製造のさらなるステップとして、既製のコンポーネントを使用して変形する食用フィルムを個別に作成およびカスタマイズできるプラットフォームを作成することを目指している
- オープン ソースの 3Drag プリンター シャーシを使用して、生物材料用のツイン シリンジ デスクトップ 3D プリンターを組み立てた
参考文献(気になったもののみ掲載)
[1] Vallg, A. et al. 2007. Computational composites.
SIGCHI ’14, ACM: 513-522.
[2] Ishii, H. et al. 2012. Radical atoms: beyond tangible bits,
toward transformable materials. Interactions. 19(1): 38-51.
[3]Yao, L. et al. 2013. PneUI: pneumatically actuated soft
composite materials for shape changing interfaces. UIST
’13, ACM: 13-22.
[4] Yao, L. et al. 2015. BioLogic: natto cells as
nanoactuators for shape changing interfaces. CHI ’15,
ACM: 1-10.
[5] Rasmussen, M. K. et al. 2016. Sketching Shapechanging Interfaces: Exploring Vocabulary, Metaphors
Use, and Affordances. CHI '16, ACM: 2740-2751.
[6] Coelho, M. and J. Zigelbaum. 2011. Shape-changing
interfacesl. UbiComp ’11. ACM: 15 (2): 161-173.
[7] Zhang, S. Y. et al. 2015. A pH-responsive
supramolecular polymer gel as an enteric elastomer for
use in gastric devices. Nat Mater 14(10): 1065-1071.
[8] Tibbits, S. 2014. 4D Printing: Multi‐Material Shape
Change. Architectural Design 84(1): 116-121.
[9] Correa, D. et al. 2015. 3D-Printed Wood: Programming
Hygroscopic Material Transformations. 3D Printing and
Additive Manufacturing. 2(3): 106-116.
[10] Ma, M. et al. 2013. Bio-inspired polymer composite
actuator and generator driven by water gradients.
Science 339(6116): 186-189.
[11] Gladman, A. S. et al. 2016. Biomimetic 4D printing. Nat
Mater 15(4): 413-418
[12] Erb, R. M. et al. 2013. Self-shaping composites with
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Commun 4: 1712.
[13] Comber, R. et al. 2012. Food and interaction design:
designing for food in everyday life. CHI-EA '12, ACM:
2767-2770.
[14] Kan, V. et al. 2016. Organic Primitives: Synthesis &
Design of pH-Reactive Material InterfacesMaterials with
Organic Molecules for Biocompatible I/O. arXiv
preprint arXiv:1605.01148.
[15] Gronsky, S. 2007. Lighting food. SIGGRAPH '07, ACM:
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[16] Schraefel, m. c. 2013. Green food through green food: a
human centered design approach to green food
technology. UbiComp ’13 Adjunct, ACM: 595-598.
[17] Mizrahi, M. Et al. 2016Digital Gastronomy: Methods
& Recipes for Hybrid Cooking. UIST ’16, ACM: 541-
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[18] Wang, G. et al. 2016. xPrint: A Modularized Liquid
Printer for Smart Materials Deposition. CHI ’16, ACM:
5743-5752.
[19] Miles, F. 2007. How Far Your Food Travels Has Serious
Consequences for Your Health and the Climate, Rep.
Natural Resources Defense Council.
[20] Steinhaus, H. 1999. Mathematical Snapshots, Dover
Publications.
次に読む論文
理論系
[5] Rasmussen, M. K. et al. 2016. Sketching Shapechanging Interfaces: Exploring Vocabulary, Metaphors
Use, and Affordances. CHI '16, ACM: 2740-2751.
[6] Coelho, M. and J. Zigelbaum. 2011. Shape-changing
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[13] Comber, R. et al. 2012. Food and interaction design:
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[17] Mizrahi, M. Et al. 2016Digital Gastronomy: Methods
& Recipes for Hybrid Cooking. UIST ’16, ACM: 541-
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実装系
[14] Kan, V. et al. 2016. Organic Primitives: Synthesis &
Design of pH-Reactive Material InterfacesMaterials with
Organic Molecules for Biocompatible I/O. arXiv
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[9] Correa, D. et al. 2015. 3D-Printed Wood: Programming
Hygroscopic Material Transformations. 3D Printing and
Additive Manufacturing. 2(3): 106-116.
[10] Ma, M. et al. 2013. Bio-inspired polymer composite
actuator and generator driven by water gradients.
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[11] Gladman, A. S. et al. 2016. Biomimetic 4D printing. Nat
Mater 15(4): 413-418
表現・アート・展示
感想
水による形状変形と温度による変化速度の制御を行うインタラクションの可能性は、食事という分野でとても大きいように感じている。かつ、もともとが2次元平面でスペースを取らないこと、折りたたむパターンをセルロースストリップで制御でき、さらにプリンティングできるまでになって一般化できるようになっていることが魅力的だと感じた。
Materialを変化させてアクチュエーションを起こすときは事前に設計としてインタラクションを組み込むこと、ユーザがアクセスしながらアクチュエーションが埋め込まれるものもアプローチとして可能であることは参考にしたい。
——以上——