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論文AdventCalendar10日目: Mycelium Artifacts: Exploring Shapeable and Accessible Biofabrication

論文AdventCalendar10日目: Mycelium Artifacts: Exploring Shapeable and Accessible Biofabrication

AdventCalendar10日目です。

自分のやりたいジャンルというか方針の決定というかがなんとなく決まってきた気がします。分野的にはバイオテクノロジー&コンピューターサイエンス? といった感じです。とりあえずアフォーダンスを書き出してやれそうなことを導いていき、これからの3ヶ月間の行動方針を決めようかなぁと思います。

 

それではやっていき。

今回読んだ論文

Jennifer Weiler, Piyum Fernando, Nipuni Siyambalapitiya, Stacey Kuznetsovによる、

”Mycelium Artifacts: Exploring Shapeable and Accessible Biofabrication”を読みました。

アブスト

  • 菌糸体 (基質上で成長して特定の形状をとることができる細い糸でできた真菌の栄養部分) を使ったバイオファブリケーションを使った取り組みを紹介する
  • 菌糸体から様々な3D形状を成長させる実験を行った
  • DISデモにもあるとおり以下の菌糸体の 3 つの製造可能性を紹介する
    • ラピッド プロトタイプ用の使い捨ての低忠実度エンクロージャ
    •  日常的な材料で彫刻された菌糸体
    • 菌糸体から成長した 3D モデルの物理的なレプリカ
  • 菌糸体を HCI ワークフローに採用するための課題と回避策についても説明する

 

実装・検証

  • 菌糸キットの栽培

    • まず水と小麦粉を加えて菌糸胞子を再活性化し、涼しく暗い場所に 2 ~ 3 日間置いておく
    • 次に、さまざまな成形方法と彫刻方法を使用して、内容物を希望の形に成形する
    • 成形された材料は、さらに 4 ~ 5 日間成長してから乾燥する
    • 乾燥した環境で保管すれば、菌糸アーティファクトは永久に保存できる
  • ラピッド プロトタイプ用の使い捨て低忠実度エンクロージャ

    • 菌糸体はその根 (フィラメントのネットワーク) が、成形プロセス中に埋め込まれたあらゆる物体の周囲にしっかりと成長する特徴がある
    • 電子部品のエンクロージャのラピッド プロトタイピングの側面で菌糸体を調査することにした
  • “UV index meter”

    • 自然環境で回路をテストした(Figure 2)

UV Index Meterの基盤と、菌糸体を成長させて組み合わせた画像のスクリーンショット
      • 菌糸混合物をプラスチック容器に積み重ねて作成した
      • 筐体には特定の形状は必要なかったので、菌糸が電子部品の周囲にぴったりと成長して、どのような形状になるかはわからなかった
      • UV 測定値を収集し、自然環境で電子回路をテストした後、筐体を分解して裏庭で分解させ、その後の反復で再利用できるように電子部品を回収した
      • 低忠実度筐体の迅速なプロトタイプ作成のための材料としての菌糸の可能性、特に ABS やアクリルなどの一般的に使用される非生分解性材料の環境に優しい代替品としての可能性を例示している
  • 日常の材料で作られた菌糸体

    • ‘Fibrous Lights’
      • キッチンストレーナー段ボール箱を使用して型を作った
      • パラソル マッシュルームの形状と表面のディテールからヒントを得た
      • 半球形をしており、表面にはマイクロ LED が埋め込まれて光る(Figure 1.C)

 

菌糸体の製造・加工・Fibrous Lightsの画像のスクリーンショット
      • 通常のプラスチック製のキッチン ストレーナーを型として使用し、菌糸の成長プロセス中に穴からマイクロ LED を挿入することを意図した
      • 完成した菌糸の型を乾燥させてストレーナーから取り外した後、マイクロ LED を接続するワイヤを Arduino Micro に半田付けし、LED をフェード シーケンスで動作するようにプログラムした
    • ‘Breathing Clock’
    • ‘Tree-of-life’
      • 陶器の粘土から手作業で形を彫刻して作成した(Figure 3)

Breathing Clockの画像のスクリーンショット
      • 菌糸体を形作るために日常的な材料を使用するだけでなく、手作業で型を彫刻する可能性を例示している
      • 再利用した半球形のグラスファイバー製の型の内側を陶器の粘土で覆い、絡み合った根と枝の複雑な有機的な形をカッターナイフで切り取り、次に、切り取った部分を手で滑らかにして、型の端に丸みを持たせた(Figure 1.A)
  • 上記の例は、菌糸と段ボール、粘土、テープ、家庭用品などのさまざまな日常的な材料を組み合わせて、カスタム形状のオブジェクトを作成する可能性を示している

    • 段ボールの切り取りと貼り付け、陶器の粘土での手作業による彫刻などの単純な技術が活用され、高度なスキルが必要とされなかった
  • 菌糸から成長した 3D モデルの物理的なレプリカ

    • 標準的な 3D 印刷素材 (ABS) は硬いため、3D 印刷された型で菌糸を直接成長させると、最終的な菌糸アーティファクトを型から取り出すのが難しくなる
      • 3D 印刷モデルのネガティブ シリコン型を作成した
      • 柔軟なシリコン型内で菌糸を簡単に成長させたり、取り出したりできるようになった(Figure 4)

シリコンモデルを作って菌糸体を成長させる型を作るフローのスクリーンショット
      • 最初の CAD モデルの細かいテクスチャと視覚的な詳細のほぼすべてをキャプチャした菌糸オブジェクトが作成された(figure 1.B)
  • まとめると、菌糸体を使用して電子機器用の使い捨て筐体を構築する方法、菌糸体をさまざまな材料と組み合わせる方法、そして菌糸体がローテク製造と 3D プリントとのコラボレーションの両方を可能にする方法を実証している

  • 菌糸体は以下の特徴を持っており、以下の側面により、この素材のより広範な採用をサポートするために、従来の設計ワークフローを変更する必要がある可能性がある

    • Safety
      • 研究で使用した菌糸の株は、人間には無害で、商業的にテスト済み
      • しかし、菌糸が生育する基質(セルロースを多く含む農業廃棄物)は、他の種類の菌類や細菌が生育するのに理想的な環境である
        • 以下2つの問題が発生する可能性があるが、適切な滅菌によって回避できる
          • 菌糸体の構造が悪影響を受ける可能性があること
          • 有害な菌類の胞子による病気のリスクがあること
    • Humidity
      • 菌糸は成長過程において、自然呼吸により多量の水分を発生することも観察された
      • 過剰な水分が組み込まれた電子機器に干渉し、損傷を与えるリスクがある
    • Time
      • 使用した市販の菌糸体は、遺伝子操作により成長が早くなるように改良されている
      • 自然な成長サイクルには最低でも 5 日かかった
      • 菌類が自然な理由で死んだり活性化しなかったりして、製品がまったく成長しないというわずかなリスクもある
        • 投資しsた時間とリソースが無駄になりプロジェクトが未完了のままになる可能性がある
    • Aesthetics
      • それぞれの工芸品は、質感、色、硬さに変化があり、独自の美的品質を呈していた
      • 菌糸の成長は、型に成形された形、周囲の水分含有量、栄養、呼吸、そして各バッチの素材の独自の生命特性によって制御されている
      • 自然な変化により、同じ型から育った2つの物体は見た目が同一ではなく、美的にユニークな工芸品が生まれた

参考文献(興味あるもののみ記載)

[1] Brynjarsdottir, H., Håkansson, M., Pierce, J., Baumer, E., DiSalvo, C., and Sengers, P. (2012). “Sustainably Unpersuaded: How Persuasion Narrows Our Vision of Sustainability.” CHI’12. ACM, New York, NY, USA, 947–956.

[2] Ecovative Design. (2018). “The Mycelium Biofabrication Platform.” Retrieved September 16, 2018 from https://ecovativedesign.com/

[3] Huh, J., Nathan, L. P., Silberman, S., Blevis. E., Tomlinson, B., Sengers, P., and Busse, D. (2010). “Examining Appropriation, Re-use, and Maintenance for Sustainability.” CHI EA ’10. ACM, New York, NY, USA, 4457–4460.

感想

みんなで簡単粘菌DIYでプロトタイピングもできる、というような粘菌の可能性について実証していて、より粘菌のできることも、粘菌を扱う研究者も増えそうだなぁという印象でした。粘菌はコンピュータとしても、シュミレーションとしても役立つので最近話題(?)になっているLiving Bits(生きているマテリアルによるHCI)が増えていきそうだと感じています。

そういえば粘菌関係であれば未踏IT2024が粘菌関係のものがあった記憶があるので貼っておきます。

未踏IT人材発掘・育成事業:2024年度採択プロジェクト概要(迫田PJ) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

 

——以上——